第9章 再び
カレンは無意識の奥で直三の記憶が残っており、ジロジロみられることが苦手だった。
仕事は何回も辞めていた。
ある日、カレンはTVをみていた。
時代物のドラマだ。
たまたまつけたチャンネルは
なんと千長の最後をとりあげたドラマであった。
カレンは何故か涙がとまらなくなった。
物語はラストを迎えた。
千長の息子の高行が最後の戦に出掛けるまえに
句を読む。高行がもう城には帰ってはこないだろうと
いう意味の句だった。
カレンは滝のやうに涙を流し、
自分でも何故か こんなに感情移入できるのか
不思議だった。
それから、カレンにとって
千長や高行が出てくる時代物はとてもおきにいりに
なった。