第1章 始まり
mside
「………」
何も言わないニノ。
いや、正確には何も言えない…かな。
いつも潤みがちな目はいつも以上に水分を含んでる。
…そんな顔をさせてるのは、絶対に俺のせいなのに。
泣かせたいわけじゃないのに。
俺がそんな顔させてるんだって。
……俺のためにそんな顔をしてくれるのが、嬉しくてたまらなかった。
…フラレかけてんのに嬉しいなんて、自分があまりにもニノを好きすぎて、泣きそうなこいつの前で俺は笑った。
「なぁ二ノ、それでもいい。」
「え………?」
「大野さんを好きで、いいよ。
…そのまんまのニノでいいから、俺と一緒にいてほしい。
そしたら、絶対振り向かせてやるから。
……俺に、チャンスをちょうだい?」
大きく見開かれた目。
驚きと切なさの入り混じった瞳。
ねぇ、ニノの目には俺がどう見えてる?
……きっと、必死で惨めで情けない俺がいるだろうな。
だけど、それでもいい。
なぁ、お前が誰を好きでもいいから。
一度だけでいいから。
………どうか、俺を見て。