第1章 入寮のススメ!(プロローグ)
築40年、そこそこボロい小さなアパートでした。
某男子校が近くにあるのですが、そこの学生さんの一部が利用しているそうなのです。
寮母さんということなので、男子寮、ということなのですが、ただの普通の昭和感ただようアパートなのです。
とにかく田舎から出たくてやってきた私は、事前情報がほぼなかったため、ちょっとイメージとちがくてびっくりしました。
「あの、ここで、掃除とかお洗濯とかご飯とかつくればいいんですよね?」
高校時代バイトすらしたことのない私は、緊張感も抜けないまま、雇い主である『坂本さん』にたずねた。
「そうじゃぁ。おんしには二階の角部屋を用意してるき。
そこに住き~」
ちょっとなまりすごくて、内容全然入ってこなかったけど、どうやら角部屋が私の部屋のようだ。
坂本辰馬さん。
この人がこのアパートのオーナー。ゆるそうな人でよかった。
「まぁ、なんか困ったことがあったら気軽に電話してかまわんき~。あとのことは新八くんからあると思うきに」
と言って、坂本さんは笑いながら去って行った。
(う~ん、なんか適当だなぁ。とりあえず、部屋に行こう)
初めての就職の私も、さすがにオーナーが適当だということはわかった。