【名探偵コナン】生まれ変わったら新一の姉でした。2
第10章 〜招き三毛猫の事件〜
夜9時頃。
その日は夜から放送局で仕事が入っていた私は、せわしなくスタッフが動く休憩中にスタジオの隅で電話をしていた。
電話の相手は可愛い弟・新一。花見の時にチラリと聞いた銀行強盗事件とデパートジャックというワード。今後その件で話しやすいようにと思い、事件の概要を聞いているのだ
新一《───で、その2つの事件自体は特に何ともないものだったんだ。でも、その時にジョディさんが火傷を負った男を見た…》
椎奈「それが、赤井さんに変装したバーボンだったわけ?」
小声でそう問えば、新一は「ああ」と肯定した。そしてあの子は言葉を繋ぐ
新一《まぁ、ミステリートレインで赤井さんの死を認めたみたいだけどな。灰原も死んだと思い込んでくれてるし…》
椎奈「でもなぜか、彼はポアロから離れない」
新一《そうなんだよ…。それを探って欲しくてお花見の時にジョディさんに来てもらったんだ。姉さんともやけに親しいし、何より姉さんを見る目が違う…まるで…》
椎奈「たしかにお客と店員にしては親しいけど、今まで探りを入れられたことないからそれだけで疑うのは違うんじゃ───」
新一《っ! そういう問題じゃねぇんだよ、姉さんの鈍感!!》
椎奈「はぁ?! 聞き捨てならないわね! 」
私の声を遮って電話の向こうで怒鳴る新一に、私も少し声を荒げた。すると、「はああ…」と長いため息が聞こえ、次に新一の落ち着いた声が聞こえた
新一《…俺は安室さんが、少なからず姉さんに好意があるように見えるんだ。テニスコートの事件も冷凍車の事件も、本気で心配してたし…》
椎奈「…好意、ねぇ。そりゃあ何度もポアロで話してれば友情ぐらい芽生えるでしょ。分からないけど」
新一《俺が言いたいのはその情じゃねぇよ…。まぁ、何があっても安室透に気を許すんじゃねぇぞ? 優しく紳士な安室透は、小五郎のおっちゃんに近づくための演技なんだ》
椎奈「……。ええ…もちろん分かってる。心配しないで?」
最後新一に声を潜めてそう言うと、そのまま電話を切った。そして、弟からの忠告に苦笑いをこぼす
新一にあんな忠告させるなんて、捜査官がそんなんじゃダメでしょ…と。
そしてスタッフから「収録再開しまーす」と声がかかり、返事をした時にはその表情も失せていた