第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
神恵は桂に全ての事情を話した。ターミナルからかぶき町はそこまで遠くないのだが、身をもって神恵の方向音痴加減を実感していた桂は、流石に放っておけず、その上知り合いの姉となると無下には出来ない。
「なるほどな…。こちらも乗りかかった船だ。お供しようではないか。」
最後まで見届けんとばかりに意気揚々と返事をする桂。まだ万事屋の場所もわかっていない神恵にとってこれ程までに心強い仲間は他に居ないだろう。
「よぉしー!そしたら早速神楽の元に…!」
秋葉原から、張り切って万事屋へと足を進める神恵と桂の姿があった。
幸いにも大通りの方から地上への出口は近く、すぐに地上階へ出ることが出来た2人。
外は既に日も暮れかかり、昼間に比べて、春らしい涼し気な風も吹いている地上はまるで先程の騒動など無かったかのように賑わいを見せていた。
「もしかすると、この1件を調べに警察が来るやもしれぬ。彼奴らに鉢合わせるのは少々面倒だ。先を急ごう。」
神恵は特に深くは受け取らず、一刻も早く神楽に会いたいがために早い足取りで街を進む。
賑やかな喧騒の街かぶき町に近づいてくると、そっと神楽のことを思い吹ける神恵。
半ば家出のような形で故郷を飛び出した神恵。既にその時には神威も家を出ており、家庭では神楽と母、たまに帰ってくる父と暮らしていた。
母が日に日に弱っていくことに耐えきれなかった神恵は直ぐに、神楽が産まれる前のような外でのらりくらりと暮らす生活になっていた。
神威もおらず母も元気を無くしていく中で、神楽だけがこの家の光であった。
神恵は家に帰ると、お姉ちゃんお姉ちゃん!と縋り付き甘えてくる神楽が可愛くて堪らなかった。
そんな神楽を置いて出ていってしまった罪悪感と、暫く会っていない妹への期待感。内心、ソワソワが止まらない姉である。
今思うと、自分が故郷を出てきた年齢と同じくらいに神楽はなっているのだろうか。
「きっと母さんに似て美人になってるんだろうなぁ…。」
神恵が道中でそっと零したぼやきは、賑やかな街の中に消えていった。