第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
…神恵が気づいた時にはそのネズミは無惨に斬られ床に転がっていた。立ち尽くす神恵の後ろから桂がそのネズミを串刺しにしたのだ。
「神恵こんなところでよそ見をしては命がいくつあっても足りぬぞ!」
言葉を失っていた神恵に強く投げかける桂。その様子はかなり体力にも限界が近づいているようだったが、そんな中で神恵を護った。
神恵はそのおかげで意識をしっかり取り戻し、少しあっけに取られつつも再び電話口に向かった。
『…いやどう見ても見た目ドブネズミ!!ピカチ〇ウこんなんじゃないから!!ってか神楽さんって何!?神楽!?!え!?!』
一生懸命状況を説明しようにも、とにかく動きながらしか通話ができず、どうしても今の状況を電話だけでは伝えきれない。
そんな最中に電話越しの音声が押し黙ってしまい、神恵はしきりに声をかける。
微かに音は聞こえるがこちらには何を話してるかまでは届かない。一度諦め周りを見るとネズミと倒れた住民や逃げ惑う住民、そして大きなカメラを背負った人がネズミを避けながらこの様子を撮っていることに気がついた。
それと同時に一度頭から抜けていた電話から大声が鳴り響く。
「おいこれって…ヅラァァァァァ!?!?!」
神恵にとっては意味不明な言葉だ。しかも瑠樺の声ではなく明らかに見知らぬ男性の声だ。しかもその声が大きく耳の奥がジンジンと痛む。
色々と勘ぐり始める神恵だが、そんなことを考える暇もなく、後ろにいた桂が声を発した。
『ヅラじゃない!!桂だ!!!む!その声は銀時!神恵殿、銀時とも知り合いなのか?』
どうやらスピーカーホンのように声が聞こえていたようで、桂の耳にもこの声が伝わっていた。
「え?!銀時?!誰それ?!そんなことより瑠樺!とにかくこのネズミがなんなのか調べてくれない!?アキバの住民は私が守るから!とにかく情報を早く!!」
先ずは現状打破のため、瑠樺にレスキューを求める神恵。電話の向こうの瑠樺は、映像を見て、通話越しの神恵の只事ではない雰囲気を汲み取りやっと動き出した。