第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
「貴様ら!ここで何をしている!」
颯爽と現れた彼は刀を攘夷浪士に振りかざしている。
傘を開いて前の見えない神恵には誰が横槍を入れたのかわからなかった。
「ゲッ!桂だ!!…チッ、お前ら引くぞ!」
その男の一声で攘夷浪士達は一斉にアキバの街に散らばっていった。
神恵が恐る恐る傘を閉じると目の前に立ちはだかる長髪の侍。出で立ちに反してスっと手を差し伸べてきた。
「怪我はないか?この辺りはあまり天人が彷徨うところではないぞ。」
その手をとり、立ち上がる神恵は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます…!助かりました…。」
「なに。大したことはしていない。むしろこちらが謝らねばならない。過激派とはいえ、同じ志を持った武士の行い、許してはくれぬだろうか。」
頭を下げた神恵に対してもっと深々と頭を下げる桂に神恵も少し戸惑いながら声をかけた。
「いえいえ…あなたが謝るようなことではないですよ。ああいう輩はどこの星にも居ますから。それより、私また迷っちゃったみたいで…。助けていただいた身で不躾ですが、もし良ければ道だけ教えて頂けませんか?」
「なるほど。それなら任せてくれ。逃げの小太郎とも呼ばれた俺、桂小太郎にかかればこのアキバ、知らない道などない。」
本当ですか!と目を輝かせながら神恵は嬉しそうにぴょこぴょこと跳ねる。迷路のような秋葉原で案内してくれる人を見つけられるというのは、ほとんど救世主に近かった。
こっちだ、と手招きをされてひょいひょいとついて行く神恵。桂は人気の多い道ではなく、細い路地や狭い道をスタスタと進んでいく。
それについて行くだけなはずの神恵は、癖と物珍しさからすぐによそ見をして桂を視界から逃してしまう。何度も桂に呼び止められ、さすがに呆れた桂は話をしながら秋葉から地上に上がる道に案内することにした。
「して、お主名は何という。ここにはなぜやってきた。」
「あっ!まだ名前も名乗っていませんでしたね…。神恵と申します。ここにはゲーム機を探しにやってきたのですがなかなかどこも売り切れで…。」
相変わらずキョロキョロと辺りを見ながらだが、桂横並びにゆっくりと歩幅を合わせながら話を続けた。