第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
「えっ!なんで僕!?」
「こういうのは女子供が行くより男がガツンと断る方がいいネ。」
「いや新聞の売り込みって決まったわけじゃないし…。それなら銀さん代表していってくださいよ。あんた最年長だろ!」
「いや銀さん心はいつまでも少年だから。そういう意味では大人の階段を上がるいい機会だろ新八、行ってこい。ガツンと行ってこい。銀さん行けると信じてるよ?お前の大人の階段を後押ししてやるからさァ」
「いやそんな大人の階段登りたくないから。こっちから願い下げだよ…。」
「…あの〜。誰がいらっしゃいますでしょうか?お留守でしょうか。」
コソコソと相談をしている間に痺れを切らしたのか玄関外の人間はトントンと戸を叩きながら声をかけ始めた。
「ったくもう…。いいですよ僕行きます。新聞の売り込みでも依頼でも追い払ってきますよ。」
「新八ィ、依頼は追い払ったらダメだろ。エアコンのため仕事頑張れよ。」
「エアコンの道を切り開くネ新八!」
新八はやれやれと困り顔をしながら玄関の方へ出ていき、ガラリと戸を開けた。
そこには大きな傘を被り、口元まで包帯で覆い隠した少女が立っていた。
新八は思わずえっ、と声を出してしまう。かなり異様な雰囲気を放つその少女は傘をチラリとあげて、新八と目を合わせた。
「失礼します。こちらに、神恵という夜兎はお邪魔して居ないでしょうか。」
「……っあ!すみません!うちには夜兎族は神楽ちゃんしか…。」
その女は大きな目で新八を見つめた。キョトンとしている新八は話しかけられて我に返ったように答えた。
「…ということはまだ神恵さんは来てないということか…。後ほどまたお伺い致しますね。お忙しいところ失礼しました。」
また傘を深く下げてその場を去ろうとする女に声をかけたのは神楽であった。
「オイ。ちょっと待てヨ。今お前神恵って言ったアルカ?」
居間から聞き耳を立てていたのか、神楽は玄関先まで出てきて来客に問いかけた。来客は特に動揺もせずまたチラリと神楽を見た。
「お前神恵の知り合いアルカ?神恵は…神恵はどこにいるネ…。地球に来てるアルカ…?」
いつにもなく神妙な面持ちで語りかける神楽に対して、少女は静かな眼差しを向けていた。