第28章 運動会
『初恋を終えたあなたがクラインに惹かれる前、彼と付き合うよりも随分前
死にたいと言った時に泣いていたでしょう?』
「うん。
クレハが止めてくれなきゃ、危なかった」ぐすっ
(853ページ参照)
あの当時は、私とケイトが出会った後のことだった。
それが初恋のきっかけになるとは知らぬまま、言葉をかけていた。
止めたくて、助けになりたくて…
本当に死ぬ理由や原理を教えてもらったから。
ここで生きていく幸せを教えてもらったから(357ページ参照)。
生命の碑を前にして泣き崩れるケイトから、あの時…確かに聞こえた。
『死にたい』と…
口に零すよりも先に、その張り裂けそうな想いが伝わってきた。
本人は自覚していないようでしたが、それはあまりにも…
お母様を失った時の私の心の中と酷似していて…見ていられませんでした。
だからこそ、あのように言った。
彼女の何気ない行為で、何度も救われてきたからこそ。
大切に想うからこそ、あのように考えたのです。
結果、ケイトは死のうとすることは止め、料理に邁進し続けました。
元気付けようと無料で配布したり、その後でユナの噂を聞いて音楽を普及したり
それからは知っての通り、ギルドを作って、レジャーランドを作って、ディズニーシーランドを作って…
挙句の果てには図書館やそれに隣接したプラネタリウムまで…
ここで生きる全ての人が、心安らいで生きていけるように尽力し続けた。
たとえやりたいからやったとはいえ、その行動に伴って得られる影響は遥かに大きい。
人の命を、周囲の心境や環境までをも左右するほどに――