第27章 休息
ケイト「…!」
クレハ「同一人物でもなく、性格も各々違い、あなたが傷付くのをよしとしない。
それでも似たような出来事は、生きている限り避けられない。
しかし、それと全く同じ人はここにはいません。
少なくとも、あなたを理解して慕う人達は特に…
確かに、あなたは昔、一つのミスを犯した。話せないということを。
しかしそれは不幸な事故、人為的に起こされた環境故のものです。
それをどうこう責める権利など、周りにはありません。
それを良いことに傷付けてきたいじめっ子達にもありません。
それを傍観していた周囲の人間もまた、同様に。
たとえいくら責めた所で、事態は解決しない。
それがわかっているからこそ、あなたは争いが嫌いなのでしょう?」
ケイト「ん;」こっくり
クレハ「だからあなたは、彼等がキリトを責めようとした時、強引に止めた。
それよりも向かうべき、優先順位が一番高いものへと目を向けさせた。
それと同じことを、あなたにもしていいんです」
ケイト「でもそれ…絶対、喜ばな
クレハ「喜ばせたいからやっているんですか?」
ケイト「え?」
クレハ「喜ばせたいから、1層の時にあぁ言ったのですか?」
ケイト「…ううん(頭を振る)
それで責めるのは間違いだって思った。
βテスターだけが全部悪いみたいに言うのも、それで差別するのも、間違ってるって。
だから、私はああしたんだ。
ただ、やりたかったから、そうありたかったから」真剣
クレハ「そうですね。
私は現場に居ませんでしたが、後でその当時の光景をヒースクリフに見せてもらいました。
管理者権限というもので過去の映像を見れるので。
その当時のあなたは凛としていて、堂々と叫んでいました。
全くぶれず、相手や皆のことを第一に考える所
ちゃんと意図を伝え、相手にそれが何を生み出すかを理解させる所
そういった所があって、皆の理解を得たからこそ…今のあなたという立場がある。
ギルドを作ると言い出した際、2000人近くもの人が集まるほどの人望を有するだけではない…
総勢2000を超える《白の鳳凰》団長として、皆が認める『大統領』として。
そしてそれらは、どれも信頼無くしては成し得ないことです」
そう言い聞かせる中、ケイトの眼は揺れながらも涙が滲んでいた。