第27章 休息
クレハ「とはいえ、それで助けられたのも事実です。
案山子の案件については、ちゃんと使用方法を守った上でならと条件が付けられるようになりました。
これである程度問題は収束するでしょう。
これはあなた一人での問題ではありません。
無論、あなた一人の責任でもない。
1層の攻略の時、あなたは言いましたね?
『どっちにも悪い点はある。でも全部の責任が誰か一人にあるかって言われたらそうじゃない!』と」←45ページ参照
ケイト「!その台詞…」
クレハ「ええ。
1層ボスを倒した後のいざこざの時、あなたが発した言葉です。
『全員で補い合い続けていけば、ずっと続けていける。
勝って勝って勝ち続けていける。
そう信じられると、勝手に思ってる』とも。
それは、その言葉は…皆を一致団結させるきっかけとなった。
そして、今のようにまとまりのある形となった。
ギルド同士の連盟、協力体制、仕事の共有。
様々な案件を経て、現実に近いそれとなった。給金やボーナスまでもまた現実となった。
迷宮の安全体制もまた、それに伴うものです。
あなた一人が、全員分の責任を負うなど馬鹿らしいことこの上ありません」
ケイト「!え?」
その瞬間、ケイトは目を見張った。
その言葉に、過去のトラウマが呼び起こされたようで
その負の念を通じてか、私にまで当時の光景が見えた。
『全部お前が悪いんだろ』
「そういう目に遭うのは自業自得だろ」
「お前なんていなければいいのに」
「いじめっ子じゃなくっていじめられっ子が悪いんだよ」
じゃあそのいじめという行為を実行に移した『その責任』はどこへ行くんだよ。
所有物なら、子供なら、文句さえ言わなきゃ、いくら何やってもいいのかよっ;(涙目)
父から蹴飛ばされる中
母から愚痴を聞くよういうことを聞くよう強要される中
いじめられっ子から、学校にいる間に常にいじめられ続ける中
いつまでも、その理不尽は変わり映えしなかった。
涙ながらに勇気を振り絞って叫んだ助けもまた同様に…
当て逃げで死に掛けたあれは、包帯だらけの姿は…最後のSOSだった。
だと言うのに…
『全部お前が悪いんだ』と、『お前が招いたんだろ』と
周囲から口々にかけられた言葉ばかりが、彼女の根底に未だ息づいていた。
自分一人が悪いのだ、と――