第25章 花見
iPS技術とは、体細胞を取り出して特別な遺伝子を導入して培養する事で、その体細胞の性質(肝細胞なら肝臓の性質)を失い、多分化性のある未分化細胞(幹細胞)に変えるものです。
この未分化細胞を『iPS細胞』と呼び、多分化性のあるES細胞と同質の『未分化細胞』なので「培養条件」によって体中の様々な細胞へと分化させる事が可能です。
肝臓細胞にしたり、皮膚細胞や神経細胞にして、移植。
それによる再生医療、すなわち治療として2022年では普通に使われています。
この細胞はもともと自分の体細胞由来の、体細胞のクローン細胞(遺伝的由来を同一とする「細胞」)なので、移植などに利用しても免疫拒絶が起きないとされています。
「その技術を応用すれば同性婚においても子供を作れるのではないか」という考え自体は、2014年にはありました。
そして2016年10月18日において、ある実験結果が公表されました。
研究グループの林教授等が、成体マウスの尻尾から作ったiPS細胞で、卵子や精子の元になる「始原生殖細胞」を作製。
その後に、約5週間の卵子形成過程を3段階に分け、さまざまな試薬を使って培養した結果、1回の実験で600~1000個の卵子を作ることに成功。
この卵子を通常の精子と受精させて子宮に移植して、健常なマウスを誕生させることができたという。
林教授は講師時代にマウスのiPS細胞から始原生殖細胞を作製、生殖細胞を持たないマウスの精巣に移植して精子にし、その精子を顕微受精することで正常な子を産ませることに成功したと2011年に発表している。
また2012年には始原生殖細胞を成体マウスの卵巣に移植して卵子を作ることにも成功しているが、マウスの体外の実験室の培養だけで卵子を作製した例は世界的にもなかったそうです。
今回の成果は、人間の皮膚からiPS細胞を作って卵子にし、体外受精で子供を誕生させることも理論的には可能。
人への応用には技術的な課題も多いが、一方で今後生命倫理上の議論も活発になることが予想される。
2016年においての国(日本)の指針では
人のiPS細胞から卵子や精子を作製する研究は認めているが、体外受精まで行うことは禁止しているとのことです。