第24章 誕生日とエイプリルフール
ケイトが転移結晶で死を偽装した後
お母様が死んだ当時のことも、これからの味わった温もりも
それら全てのことが同時に胸によぎって、泣きじゃくるばかりでした。
そして私は…
咽び泣くばかりで、その場から動けぬまま覆い被さるばかりでした。
死んだお母様に覆い被さったように、死を認められなかった時のように……
本当の経緯については、照れ臭くて言えなかった。
言いたくもなかった。
でも始めた理由(285ページ参照)は、祖父から諭された時の方便で、それがあまりに理に適っていると思ったからなのです。
ただ買って、母の仏壇に供えて終わりというだけ。
それではあまりに空しいではないかとの後押しもあり、SAOを始めたのです。
2024年3月21日、心の整理がついた所で春の彼岸ということもありお祈りに行った。
その後で鐘の音を聞いたあの時、母が心配して覗き込んでくれたようにも感じた。
でも心配は要らないと伝えたかった。
けれど…失ってしまったと感じたあの時、哀しくて哀しくてやるせなくて…
どうしようもない思いに駆られるばかりで、涙が止められなくなっていた。
そうして、ケイトが何事もなかったかのように元気そうにはしゃいでいた様子を見た途端
死んだと思って哀しんでいた時間が、どうあっても消せない哀しみをも、怒りがぶち抜いた。
激情に駆られるまま殴り飛ばしましたが、感情というものはやはり不思議なもののようです…
激情という名の怒りを発散した後
我に返ると、生きていたという事実による果てない喜びが沸き上がってきました。
その哀しみをも鬱憤させるほどに
その温もりをすぐにこの腕に閉じ込めたくて、触れたくてたまらない思いに駆られて…
私はただただ必死に談話室から玄関に向けて
轟音と共に落下したケイトへ向けて、懸命に走って行き
白の鳳凰本部の玄関の扉を開けるや否や、ケイトの元へと跳び付きました。
その周囲にはキリトとアスナがいたそうなのですが
当時の私には頭に残らないほど強烈なことばかりだったので、気付くのが泣き止むまでと時間がかかってしまいました。
何にせよ、生きていてくれて本当によかった。
それが私の、心からの心情でした。