第4章 攻略組
20歳になってから、アスペルガー症候群の傾向があると診断されたらしいが
周囲とほんの少し違うだけで、それほどまでに迫害に近い行為をされていたことから、余計に人が苦手になったのだと思う。
本人の本質は、俺が思うに優しい人だ。
抵抗できなかったのではなく、しなかった。
しないことで、そのような思いをさせまいと頑張った。
普通なら「よくも!」と仕返しをする人間だっているだろう。
でも彼女はそうしなかった。相手の気持ちを、誰よりも汲んでしまうのだ。
苦しみを何度も刻み付けられたからこそ、余計にそれがわかってしまう。
だから…相手を想って涙を流す。自分のことのように…
そういうケイトの生い立ちを知る前でも、俺は良い奴だと思う。
そういった部分を見ようと、周囲がしなかっただけだ。
目に見えるものだけを見て、本質と向かい合わなかった。
人に恵まれなかった。
それでも…それで人を傷付けて生きようとはしない、その生き様は
俺からすれば立派だとも思うし、尊敬している。
というより……
その闇を丸ごと一人で抱え込んでる所は流石だともいえるが、大丈夫だろうか?と心配になってしまう。
キリト「じー)…」
ケイト「よぉし!!
ヒースクリフが盾なら、私は囮役だ!!
ヘイトを稼ぎまくるぞー!」
ヘイトとは、敵キャラクターのプレイヤーに対する敵対心。
敵キャラクターは、ヘイトの高いプレイヤーに攻撃してくる。
それを引き付けることで、他への攻撃を抑える役割も持っている。
そんな心配をよそに、ケイトはヒースクリフに意気揚々と話していた。
アルゴ曰く、「本人はもう大丈夫だと言っているが、たぶんそう自分にも言い聞かせているんだろうナ」とのことだ。
俺もそう思う。
いつか…ケイトが過去のフラッシュバックに襲われたら、何か助けになりたい。
その楽しそうなケイトの笑顔を見て、俺は強くそう思った。