第22章 異変
癇に障る。
そういじめっ子の彼は言っていた。
ケイトをいじめ続けていたものもまた同様に。
でも…やはり、どうしても好きにはなれない。
殴るこの行為も、倒れた瞬間に蹴りを入れる感覚も…
痛く、苦しい。
殴られる方が、殴る方よりも傷付くのは解る。
でも…今の私の心は、とても苦しんでいた。
「何でだよ…何で、泣いてんだよ)
…」
いじめっ子を殴って蹴る中
彼はふと薄目を開くと、映ったその光景に驚いていたようです。
いじめられっ子が最初に、それを傍観していた周囲もまた一緒になって泣いていたのですから…
「そっか…
俺がいじめた時は、皆見て見ぬ振りしてたっけ)……」涙目
その瞬間、想像して涙を滲ませた。
「正一…いつも、こんな想いでいたんだな。
半年間も…ずっと……
ごめん…ごめんなっ」
彼は小さく震えながら、何度も何度も殴られ続けていった。
彼が無抵抗で、何度もされてきたように…
その痛みを知って、経験して…
ようやく、その痛みを理解してくれたようにも感じまた。
どういう行為をしたのか、それをされた時にどんな思いをするのか…
それはやはり、その身に経験しなければわからないでしょう。
理不尽に降りかかり続ける痛み、言葉の刃、
何も言わぬ周囲、距離を取って友達ではなくなるもの、
誰も助けず、ただただ相手にせず、見ていても見ていない振りをして
挙句の果ては自殺を図ってもなお平然としてられる者達しかいない。
そのような環境は、そこにあり続けなければいけないようにされた時間は…
その間に残る濃密過ぎる経験は、人を狂わせる。
あの時のように…
それから、互いに思ったことは伝え合い、
たとえ理解できずとも、そう思う人も居るんだなと認識付ける形で和解し合うことになりました。
相手の声も聞かずに、頭から全てを否定するような輩には成り下がりたくない…というのが、総意の結論となりました。
結局の所、丸く収まる結果となって何よりでした…