第22章 異変
ケイト「それでもいじめっ子は、いじめられっ子が悪いって信じてる。
そして聞いてきた奴に言い聞かせてる。
悪いのはいじめられっ子の方であって、自分じゃないってな。
そうでもしなきゃ、自分が悪者だって捉えられるからそりゃ必死なもんだ。
どれだけ言いつくろうが消せない『犯罪』を犯したのに、だ。
そう浮き彫りに、悪い所しか見ない。善行は見ない。
教えるのは悪い点だけ。話したこともない。触れ合ったこともない。
それなのに決めつけて悪だと言われ続ければ、どう思う?
実際に話さなければわからない事の方が数多くある中で、話さないという選択肢を取った。
それが何を意味するかというと『人を理解する』という行為の欠落だ。
その上でも悪者だと、あいつらは口を揃えて言った。
いじめられっ子の側として言わせてもらうと、毎日がそうされ続けることで心が痛む毎日だったな。
来る日も来る日もずっと心に消えない傷を付けられて、必死に罵詈雑言を言われ続けて
これ以上嫌な思いをさせまいと接触を断っていたにも関わらず、わざわざ近寄ってそう叫び続ける。
それの仕返しをしたこともないのにだ。嫌なことをずっとやり続けているように言い続けていく。
大人になった今もなお、ずっとそう言い続けている奴だっているからな。
そうされ続けたことがないのに、その痛みを知らないのに、いじめっ子は悪くないと主張する。
いじめっ子側の傷は知らないが、いじめられっ子側の傷はよく知っている。
長年いじめられ続けてきたからな。父親からも、同級生からも。
一生忘れられない、夢にも見る、悪夢として出てくる、悲鳴で跳び起きることだってある。
そして声が出なくなった。人と話す時、途中でブレーキがかかって出なくなった。
人に囲まれるのが怖くなった。男が苦手になった。気の強い女が苦手になった。
刷り込まれた環境、意識、強要された変化。
さて…ここで一つ問おうか。
その傷と、お前らいじめっ子が持つ傷…どっちが重い?
そうされるだけのそれを、いつ、どこで、どれほどの痛みをお前らに与えて、
そういういじめを実行し続けることが当たり前だと思った?
それの、どっちが悪い?
どの口が正しいと、心から言える?」
いたって振る舞いは冷静でありながら、それは有無を言わせぬ強いものでした。