第19章 正体
ヒースクリフ「ほお…
私が死刑クエストを取り入れる前から気付いていた、か…」顎に手を当てる
クレハ「私も当時は知りませんでしたが、ボス戦にてたまたま…
あなたに攻撃が当たりかかったそうなんです。
ですが当たる寸前、現われた表示にガードされました。
その表示は…『システム的不死』。「Immortal Object」と…
その紫色の表示が出たのは、ほんのごく一瞬。
しかも背後のどうしても死角となる部位だった為、誰にも気付かれなかったそうです。
彼女以外、見える場所にはいなかったので」
ヒースクリフ「なるほど…
囮をしていた彼女が避けきれない時にボスの間に入ったことがある。
その時に勢い余って刃が私へぶつかりそうになったのだろうね」微笑&頷
クレハ「…私は、彼を責めない彼女に疑問を禁じ得ませんでした。
ですが彼女の口から聞いた時、すぐにわかったのです。
彼女は…ケイトは…あなたを、慕っている。
あの時(248ページ参照)、15層ボス戦で助けてくれたことを忘れていない。
確かに、あなたは1万人もの人をここへ閉じ込めました。
しかも死ねば本当に死ぬという残虐非道な行為です。
ですが…これまで沢山のプレイヤー達を助けてくれたのだから信頼に値すると、ケイトから言われました。
確かに、攻略組として共に乗り越えてきたのは事実です。
それでも…どうしても赦せない!」
ヒースクリフ「…正論だ。
それで…君は、どうしたい?デュエルでもするかね?」
クレハ「いいえ。
それでも、それとは別の感情があるので」
ヒースクリフ「?
怒りを抱かれるまでは解るが、それ以外に何を?」
クレハ「それと同時に、湧き上がってくるんです。
このゲームに出会えなければ、彼女と会うこともなかっただろうと…
私の住んでいる土地は群馬県、赤城山の麓と大沼に挟まれた田舎。
それに対してケイトが住んでいる土地は大阪府、大阪狭山市…
どうあっても、逢うことはなかったでしょう。
ですが…
私は、彼女に会えたお陰で変わることができた。
人生観も、世界観も…大きく変わり、拡がりました」
赤子となったケイトを見つめながら微笑む中、ふと涙が滲みました。
結婚式と披露宴で、また、その前であっても流したのと同じように…