第17章 不測の事態
紅葉(クレハ)が教えてくれた。
もう怖くないと、恐れなくていいのだと…
決して、離さないと……
だから、強くいられる気がした。
でも…
入った瞬間に感じたのは…まったくもって、別の感覚だった。
《The Reliefhands》
救済の手、それが第50層のボスモンスターに付けられた名前だった。
外見は金属性の仏像のような姿で、足を組んだまま僅かに浮遊し、三対の腕で打撃を繰り出してくる。
多腕型ボスの例に洩れず攻撃回数が多く、高い攻撃性能を持っている。
また、金属製という見た目の印象に違わず防御力も高い。
偵察部隊が持ち帰ったこれらの情報はパーティ全員に伝えられ、KoBを中心とした対策会議で対策が練られた。
そしてそれは生かされたようで、私達二人がいなくても大丈夫だったのが目に見えた。
それが、Congratulations!!という表示。
後に聞いた所、50層迷宮クリアの総合所要時間は5分0秒32。
キリト達攻略組がクリアした直後だったようで
クレハが入った瞬間に自動で閉じられた扉に、私は慌てながらも皆と話すために勢いよく開けた。
すると…待ち構えていたのは、イレギュラーボスだった。
クリアと認定された直後に入った為か、他には何もなく空虚のままだった。
その変化に、私は動転した。
白い背景に、白いボス。
ボスの向こう側にあるであろう階段を昇れば合流できると踏んで
早く合流しようと焦った結果
ボスの守護地区まで進んでしまったようで、その直後に警告が現れた。
『警告』
『クリアと判定された0秒00のタイミングで入室したため
これより規定通りイレギュラークエストとしてボスの討伐クエストを開始します。
よければ○を、参加しなければ×を選択してください』
焦ってばかりで、文章もよく読まないまま
即断で○を選択した直後、再び警告がやってきた。
ケイト(それよりも早く皆に会わせろよ!!!)イライラッ
苛立ちからか、焦りからか、その両方でいっぱいいっぱいになっていた。
自分で自分の視界を狭めていたことに気付いたのは…
その最後の警告を、ちゃんと読んだ時だった。