第17章 不測の事態
ケイトはいつも、人のことを考えて怒っていた。
私のことも同じ、そして前の時のキレたのもまた同様に。
ですが、今ケイトが感じている怒りこそが本来誰もが持っているもの。
常に傍にあった暴力や虐め等によって、麻痺して失ってしまった心の欠片でした。
クレハ「それが通常の反応なんです。
忘れないで下さい。
あなたには無限の可能性があって、どんな未来だって選べる。限度はありますがね。
それを自分で殺さないで。
それは生きる道を狭めること。視界を、未来を、世界でさえも自分の中では変わってしまいます。
決めつけて狭めることなど以ての外です!」
ケイト「クレハもそうだったもんね」
クレハ「ええ」
ケイト「でも…もう大丈夫だよ。絶対に生きるから!」
クレハ「そうですね。もし倒れそうになっても、世界を滅ぼそうとするほどの怒りに飲まれたとしても、私が止めます。
何度でも、私が取り戻させます。あの時のように…」微笑
そっ
そう走りながら、ケイトの左手をいつものように右手で取った。
すると、ケイトは笑って頷いて握り返してくれた。
ケイト「うん!
誰でも、そういうことは何度でもある!
要は、見失わない事!立ち向かう事だよね!!」ぐっ!
クレハ「ええ!
その意気です!!
絶対…絶対に、離しませんからね(微笑」ぎゅっ!
ケイト「うん!危なくなったらすぐ言う!
きつくなったら、絶対にすぐ!」
クレハ「ええ…」ふっ
そう会話しながら、私は涙ぐんだ。
笑いながら、涙が頬を伝って落ちていった…
ようやく取り戻してくれた。
それまでケイトは『殺そうとされることが、傷付くような言葉を吐かれるのが、喜ぶべきこと』だと思い込んでいた。
それが今、怒りを持ってくれた。
人の為に抱くそれではなく、純粋に感じたそれとして……
それがあまりにも嬉しくて、感無量となって…
真っ直ぐ前を向いたまま、走ったまま、零れ落ちる涙を止められずにいました。