第17章 不測の事態
目を向けた先には…涙をぼろぼろと零すケイトがいた。
左手で、強く握り締めた私の右手を力なく握って。
か細く、耳を傾けていなければ聞こえないほどに、あまりにも弱々しい声が小さく部屋に響いた。
ケイト「どうすればいいんだよ…;(ぽろっ)
どうしろっていうんだよおお;;(ぼろぼろ)
どうしたって、そっちの年月の方が長いのにっ;
そっちの想いの方がどうしたって多いのに;;;
何でって;;言われたって!;;
どうにも、しようが、なくって;;」ひっく
そうしゃっくりを上げる中、必死に涙を右手で拭っていた。
助けを求めるように縋る弱々しく震える彼女の左手を、私はそっと握り返した。
両手で包み込むように…
きっと、あの誓いも、約束も、想いも、嘘ではない。
ちゃんと解っている。嘘がつけない人だと、嘘をつき通せない人だということぐらいは…
あれらの言葉は全て、彼女にとって紛れもなく本物だった。
その全てが、本心だった。心からの言葉だった。叫びだった…
嘘ではないのだけれど、過去のそれがあまりに長く、重く、非常に濃密だったからこそ押し潰されかけているのだと
私はその様子を見て悟り、不思議と溜飲が下がりました。
それを薄々感じ取ってか、理解してくれると信じているからか
彼女は真っ直ぐに、私の目を見つめて返事を待ってくれていました。
その少しだけ落ち着きを取り戻した彼女に、私は見つめ返しながら静かに笑いかけて
ぎゅっと握った左手を優しく撫で、言葉を返した。
今までの想いを、込めるように…
クレハ「ケイト…それは、私も同じです。
ずっと、あなたのように受け入れてくれる人が欲しかった。
家族以外では、そんな外見にとらわれない人などいなかった。
出会うことなどできなかった!;
でも…あなたは違った。
私の外見のことで、とやかく言う連中を…あなたは叱ってくれた。叫んでくれた。
真っ向から、私の為に戦ってくれた!;;
あなたが居てくれて、私の為に動いてくれて…
これほど嬉しかったことなど…あの時……本当にっ!!;;」涙
言葉にならないそんな想いが今、胸が張り裂けそうなほど存在を訴えかけていた。
それほどに…彼女という存在は強烈だった。
あなたがいなかったら、私は当に死んでいたのだから……