第15章 強さ
クレハ「ケイト…
今すぐに謝るのをやめなさい!そこで利用されたらどうするんですか!?
下手(へた)に下手(したて)に出て弁償代として国宝級のそれを求められたらどうするつもりなんですか?」
ケイト「すぐに差し出します!;」敬礼
クレハ「ダメでしょう!!;
第一…あなたが怒っていたのは何に対してですか!?
やっと立ち直った人達が不安に駆られたのを見てキレたのでしょう!?
あなたが受け持った人がその中にいたから、余計に強くそう思ったのでしょう?」
不安に駆られる人がいた。その中に、見覚えがある人がいた。
両手で口元を覆って、怯えて震えていた。涙ぐんでいた。
そのケイトがキレる前に向けていた視線の先に、しゃがみ込む人がいたから…
そのことでキレたのだと、その人を見た瞬間にすぐわかった。
ケイト「そりゃ…そうだけど;」
クレハ「その不安を拭い去るのは非常に困難です。
ですが、それでも力になりたいからと立ち上げたんでしょう!?
なら今すぐ立って、自分にできることを考えなさい!!
謝らずとも好いのです、あなたには怒る権利があります!!
あの人達に不安や思ったことを口に出す権利があるように!
取った手段が間違っていれば、その後で弁解でも弁償でもすればいいでしょう。
ですが、あなたは間違ったことはしていない。間違ったことを言ってもいない。
堂々となさい」
怒るのは悪いことではない。手段が悪いだけ。
そう伝えたくて、私は訴えた。
再び、心を殺すような真似なんてさせたくはなかったから…
あの当時、怒りのあまりに瞳孔が開いていた。
キレたのはきっと…
今までの苦労がふいになった、不安に負けじと必死に立ち上がった勇気までもが、無下に罵倒されたようにも感じたから。