第15章 強さ
生まれつき、赤ん坊の頃には誰でもあの世に近いが故に
目に映らないそれも、平気で視えていた。
しかし、煩悩が増えていくに従って、それを感じなくなるのが一般らしい。
要するに最初は誰もが霊感を持っている。
煩悩や目に見えるそれらなどにばかりとらわれ、それに依存したことから認識できなくなっているだけ。
魂によって見る、聞く、それらを同時に感じ取る感知能力…
あの世に居る際、元々は誰もが使っていた力。
それこそが霊感の正体。
それ故、この世で普通と同じように過ごすためには
その感覚に対する『圧倒的な集中力』と『並列処理能力』、その両方が求められる。
だからこそ、《神速格闘術》を得ることになった。
いえ、勝ち取った。
クレハ「ケイト…」
ケイト「すーすー」
起きたら、どう言えばいいだろう。
どんな顔をして、彼女と向き合えばいいだろう。
そんな疑念が、胸をよぎった。
頬を撫でると、少しびくついた。
が、すぐに安心したような表情を浮かべた。
クレハ「私も…こんな顔をしていたのでしょうか?」
人のことなど、気にかける気は全くなかった。余裕も同様に…
助けなければいけない窮地で、助ければいいと思っていた。
理解を深めた所で、裏切られることなど数多くあった。
信じ切ることなど、信じる行為そのものさえも信じられなくなっていた。
いつしかそれさえも忘れ、人と距離を取るようになった。
信頼できる人以外とは…
今の…先程までの彼女もまた
かつての私と同じように、そんな余裕さえもなかった。