第15章 強さ
神速格闘術は…
その数多な感情の思念さえも感じ取り続けている中でも目の前のことに集中できる、
『圧倒的な集中力』と『並列処理能力』から実行可能となる技。
それらは、生まれ落ちた時から
普通のそれと同じ感覚になるよう、
人としての身体へ、その意識へと集中し続けるようにしていたからこそ
人のことを読み取る際には、その者へと意識を向ければすぐ手に取るようにわかるらしい。
要するに必要だったのは、魂としての『全方位認識能力』ではなく
『人としての意識』へと集中させる方法と、向ける方向の『一点集中』。
霊感とは、『魂』が感じ取る数多な情報の中で、必要なものに意識を集中させ、脳がそれらを整理することで成し得ている能力。
自己を中心として周囲へと拡がる意識、それは全てを感じ取る上に見透かす。
現実検証をしてみた結果、それらは全て百発百中で嘘や幻覚や幻聴や妄言などとは到底言えないものだった。
魂そのものと向き合っているのだから、人格の本質とも向かい合っているのと同意義。
ちゃんと、わかっていた。利用されていることぐらい…
それでもなお、彼女は信じたかったのだろう。助けたかったのだろう。
あちらでも全く同じ状況だったようですが、明日になれば落ち着いていました。
でも…助けようとした結末が
その結果がこれでは…あまりにも報われない。
助けようとしてきた結果、力になれるならなろうと努力してきた結果
感受性が強いあまり、相手の困るそれを、感情を無視できなかった。
それでも嫌われることが当然だと、その方が殺された時に喜ばれると、身体が動かなくなった。
誰も望まなかったから、周りは拒否しかし続けてきたから…
自身を理解することを、知ることを……
結果として、ここまでに精神が荒れ、蝕まれてしまった。
フラッシュバック、PTSDによるものだと推察されますが
今現在になり得ている「普通」と、過去押し付けられ続けてきた『普通』…
それらのあまりもの差に、当時の感情の奔流に、意志の力が押し負けたようにも見えました。
自分一人がおかしいのだと、周囲から大変な目に遭い続けてきたからこそ…なおさらに……
それが自身にとって『「全て」』だったと言っていた。
その意味が、この出来事を通じて解った気がした。