第14章 出会い
当初、私は茅場晶彦の言うことなど信じる気はなかった。
だから死んで帰ろうとした。一番確実で早い方法だと考えて。
夢の中で死ねば、現実へ戻れる。それと同じだと考えていた。
何の信憑性もない彼の話など、信じる価値もないと切り捨てていた。
ただ、一度死んだ人は再びログインすることはない。
その現実よりも、帰ろうという気持ちが率先して先走ってしまっていた。
ここで得られるものなどない。それよりも今は大会だと…
でも、彼女が止めてくれた。
私より強い人がいなければ、ここにとどまる理由はないと説明すると…
ケイト『何なら今から修業やるか?(にや』
クレハ『ええ!(微笑&頷』
HPが1の状態であるのにもかかわらず、彼女は付き合ってくれた。
圏外で、下手をすれば死ぬかもしれないのに…私のわがままに付き合ってくれた。
その時…私よりも強い人に、私は初めて出会った。
彼女は、私へ生きて欲しいと望んでくれた。
それ以上の時を、一緒に過ごしたいと語っていた。とても楽しそうに…
そんな彼女に、いつしか惹かれていた。
私も…彼女にそう望んでいた。
いつの間にか、放っておけない存在になっていた。心から愛しく想った。
だから……助けたかった。
ケイト「……」
クレハ「あなたが答えられないのも、無理はありません」
微動だにせず俯くケイトへ、私は言い放った。
クレハ「今のあなたは、感情に飲まれて、振り回されているだけ。
当時の感情、情景、その全てが一度に押し寄せたことで何十年にも渡って溜め込まれてきた
やり場のない負のそれらに押し潰されかけているだけなのですから」
ケイト「!」はっ
クレハ「今のあなたは…何も信じていない。
信じる行為を忘れていた、あの時のあなたに戻っただけ。
ですが、昔とは明らかに違うものがある。
この世界に来て、初めて出会った人達、共に乗り越えた極地、絆、笑顔、幸せ…沢山のものを、あなたは与えてくれた。
傷や痛みは共に乗り越えればいいと、いつでも気にかけてくれた。
異変があればどこから聴きつけたのか(ふっ)
あなたのことです。霊感を使ったのでしょう。
それで察知するや否や、いつでも駆けつけて、救けてくれた。
何も、見返りを求めずに…」