第13章 生きて
あなたのことだから…
きっと、相手のことを考えてのことなのでしょうね。その一挙一動の全てが……
『おかしい…何で、ずっと戦い続けていられるんだろう?』
その疑問がよぎってから、私は考えていた。
修業で何度も何度も戦い続けていくものの
連絡があれば瞬時に駆けつけ、信じられないほどの力で救ける。
そして帰れば、何事もなかったかのように修業を続ける。
何度も見てきたこと、なのにどこか違和感があった。
その違和感の理由が、今になって気付いた。
今まで見せていた力自体が、全力ではなかったのだと…
危機感に襲われた時、誰かが危険な時、その一瞬のみに全力が出ていたこと。
そうでなければ、あんなに長く戦い続けることはできない。
ましてや、私を含めた2000人相手に1週間も戦い続けることなど…
それも、相手を傷付けぬため。
傷付くことで苦しみや痛み、哀しみにさいなまれる時間を少しでも減らすため。
だからこそ、全力を出すのを、本気を出すのを忘れてしまった。
誰かが危機に瀕した時以外は……
そして、いつ誰かが危機に陥るかわからない。
だからこそ、その時すぐに駆けつけて護りたいから、そのために押さえていた。
誰かを、護りたいから、助けたいから、同じ思いをさせたくないから…
彼女の中にあるそれは、常に誰かを想う一心であって、それらは全て…
自分の未来を考えていない、人の為に捧げるものばかりだった。
自分のしたいことは?未来に成し遂げたいことは?
これから先、どう生きていきたいか…
それらさえも考えず、たとえ死ぬことになろうとも誰かを助けられれば
誰かがそれで幸せなら、自身が危機に瀕しようとも平然と笑う人だから…
自分が不幸になれば誰もが喜ぶと、本気で信じるほどの人だから……
だからこそ、ケイトへ伝えたかった。
自分を失う前に、手遅れになる前に…
自分の生きたいように、自分の幸せを求めて、生きてもいいのだと……
今の彼女は
到底、『生きている』なんて言えないからっ――