第13章 生きて
この世界が、憎かった。
殺そうとする人以外に、会えたことなんてなかったから。
何より身近に、血の繋がった父親に殺されかけるのが当たり前だったから、傷付けられるのが当たり前だったから…
助けてくれる人なんていなかった。
何度助けを求めようが、叫ぼうが泣こうが、全て無視されるだけだった。
毎日いつ起こるかわからないDV、それにいじめも重複する、誰もが助けない。苦しみあがく様を見て笑う人しかいない。
解ってる…
この考えが、認識が、日常が、どれだけ歪んでいるのかも。
普通の人は、そんな日常ではないことも……
でも…だからこそ、思ったんだ。
こんな思い、他の人には味あわせたくはないって…
だから、傷付けることも、殺すことも、絶対にしたくないって思ったんだ。
何度もされてきたから、そうされる痛みが、身をもってわかるから。
どうせ助けてくれる人なんているわけないって思わなきゃ、苦しいだけだった。
大人は勝手だ。見ないふりしかしない。
子供も同じだ。自分にとって都合のいい部分しか見ない。
自分の勝手で傷付けたり、殺そうとする人しかいなかったから…
誰も信じなくなった。頼らなくなった。話そうとも思わなくなった。
でも…
あいつらに会えて、世界が拡がった。
それだけじゃないって、知れたから……
目の前の世界が、彩が鮮やかに変わっていった。
黒しかなかった風景が、光に満ちた。
『信じて』
『私達なら大丈夫』
その言葉をかけられるまで、忘れていた。
その前までは…ずっと、信じていたことを。
過去に周りの言葉をうのみにして、自分が悪いのだと、発端なのだと自身さえも信じられなくなっていたことを。
信じてもいいのだと、大丈夫なのだと…
全力でぶつかって欲しい、生きて欲しいと言われたようにも感じた。
その瞬間、越えてかなきゃいけない自分がはっきりと見えた。
それは過去の重さ故に歪んだ自分で…
生きようとする意志をなくしていた、護ろうとする時にしか本気を出せていなかった。
本当に、心から望んで、必死になってたことだったから……
それを自覚して、全部を信じようとした時…
まだ私が知らない私へと、変わった気がした―――