第13章 生きて
クレハ「あなたは
たとえ死刑であっても、それを、その殺しをなかったことにしようとしなかった。
無下にしない行為こそが、本当に…大事な事だと私も思います」
ケイト「…そんな…大層な事じゃ、ないんだ。
あいつは…父は、殺して当然だという顔をしてたんだ。
昔っから外面だけはよくて、うちでは横暴で…
後で表面上をどれだけ取り繕っても…
自分のものだ、どうしてもそれは俺の勝手だと、その心が言っていた。
霊感があるから、余計にはっきりと視えた。
そういう人だって、長い付き合いだから解ってた。
威圧のように裁判で叫んでは、二度としないだろうと自分に証言させようとしていた。
あんな人間にはなりたくなかった。
だからか、余計に殺しが嫌なものという風に映っていた。
人を傷付けることもまた、同様に想っていた。
最も憎むべきは、それをやっても何とも思わない心だと…
だからかな…自分が、赦せないんだ。
それ以外に方法が見出せなかった。
牢獄に閉じ込めても一時しのぎに過ぎない。
そんな相手への解決法が…まさか、あいつのしたことと同じ行為だとは…;」
クレハ「違う!!」
その瞬間、クレハに肩を掴まれながら否定された。
ケイト「!…え?
でも…やってることは、同じで」
クレハ「よく考えてみてください!!
あなたは…人の命を、ないがしろに出来る人ではないでしょう!!?
人を殺した後、あなたは笑っていなかった!
ずっと口をつぐんで、重い何かを背負ったような顔をして!
本部に帰ってからもそうだった!
夜中の三時に帰ってからすぐ屋上に登って、夜明け頃に降りてきて…
その時…あなたは何て言ってました?」
ケイト「え?…そりゃあ……」
クレハ「…『生きろ』」
ケイト「!」ぴくっ
その言葉に、肩が震えた。
それは
自分に向けては、言ってなかったことだったから……
自分に向けて言われた時になって…その意味が、重みが、十分に伝わってきた。