第9章 すれ違い
クライン「俺ぁ…それがやなんだよっ」ぼろぼろ
ぐすっ
ぎゅうっ
俺は一人、拳を握り締めた。
涙が止められない中、泣きじゃくりながらガキみてえに訴えかけ続けていた。
止められない言葉を、形にして…
クライン「あいつの苦しむ顔も、哀しむ顔も、俺は見たくねえんだよ。
でも…あいつは、笑ってて欲しいって言ったんだ。
けどあいつは人の為にずっと動き続けてるから放置プレイだしよ!;ほとんどが!;
だから……その…」
キリト「構って欲しかったのか?」
クライン「うっ;…言葉にして言うなよ;」ぐすっ
キリト「なら、それをはっきりと伝えればいいだろ。
確かにいつもよりは多いなとは思ったけど」
アスナ「でも、ケイトちゃん誤解してそう」
『え?』
その不意に呟かれたアスナちゃんの言葉に、俺達二人は固まった。
アスナ「『私への思いなんて、結婚していながら他の人へプロポーズできるぐらいの程度のものなんだ。嘘をついてでも付き合ってたいから誤魔化したんじゃ、お金目当てで結婚したんじゃ』って…」
クライン「そりゃ誤解だ!!;」
アスナ「私達は聞いたから解ったけれど、ケイトちゃんは聞いてないから…」
キリト「俺達が言っても、フォローに回ろうとしているとしか見えないもんな」
クライン「じゃあどうしろって言うんだよ!;」
『追いかけろ』
クライン「ええ!?;相手はAGI最速だぞ!;」
キリト「俺が追跡する。全力で走るぞ」
アスナ「そうね。
私だったら、これだけ不幸が被ったら今頃自殺してるもの」
クライン「ええ!?;」
そうして、始まりの街…西側テラス。
飛び降り自殺が多かった場所へ向けて、ケイトが歩いていったことがわかった。
俺達が見つけた時は、そこへの近道となる路地裏に居た。
2023年06月13日の夜…
忘れられない想い出が、その時に紡がれた。
あの当時の衝撃は、今でも忘れられない。
そのすれ違いは、すっげぇ痛くて、辛くて…
でも……
今じゃあ、とても温かかった、大事な想い出をくれたと思ってる。
ケイトと乗り越えていくためにも、とても大事な出来事だったように思うんだ。