第9章 すれ違い
土下座をした後の、ひざまずいた体勢のまま
情けなくも、泣きそうな声は続いた。
クライン「俺ぁ、そんなあいつが今にも死ぬことを選びそうで怖かった。
そのくせ、あぁやって大丈夫だって強がったり、無理して笑ったり
βテスターによくしてくれたり、誰にでも差別しねえでよぉ。
それなのに…あんなのねえだろ?」
気付けば俺は震えが止まらなくなっていた。
言葉が止まらなかった。感情も、想いも…止められなかった。
クライン「あいつの過去を聞いた時、俺ぁはらわた煮えくり返った。
何も知らねえのに、噂や行動だけで勝手に本質決めつけて、全員で寄ってたかってよ…
嫌な思いばかりさせられてきたのに、あいつは笑ってんだ。
それが普通だって、日常なんだって、自分が痛い目に遭うのが苦しむのが普通なんだって…
それが嫌で、見てるだけで苦しくって…でもあいつは無茶ばかりして……」
ぽとっ
そう震える声が静かに路地に響く中、涙が自然と落ちていった。
俺達以外、誰もいない。
二人は静かに、黙って聴いてくれていた。
クライン「少しぐれえぶつけに来いよ!
何だって聞いてやんのに、何も言おうとしねえんだ。
あの時の不安も!不満も!怒りも!
あいつは全部話さねえで、普通だって切り捨ててやがんだ!!;
自分を殺して、感情も殺して、平然と周囲は笑ってるから、怒るこっちがおかしいんだって、自分がおかしいから悪いんだって……
ずっと…ずっとなんだぜ?;
そりゃぁ、ねえだろぉ…?
でもよぉ……
それで問い詰めたら、あいつ…壊れちまいそうで…」ぽとぽとっ
涙がとめどなく零れ落ちていった。
それは、地面に吸い込まれていっては、静かに安いエフェクトを残して消えていった。
ただ…情けなかったんだ。
悔しかったんだ…ケイトに、頼られなかったことが。