第8章 レジャーランド
当時、ストレス発散の道具として扱われる過酷な日々故に
気付かれぬように咄嗟に急所を逸らす、相手が気持ちよく殴れるようにしつつ自身のダメージを極小にする。
そんな風に「毎日がいつ殴られるか殺そうとされるかわからない」という『極限状態』だったからこそ
風月流を編み出し、高3の時にボクシング部のパンチを走りながらでも避けれたらしい。
そのDVが激しくなった折、いじめも重なっていたことから
人間に対して恐怖しか感じなくなったのは、仕方のないことだと言えるのだけれど…
最期まで、父親とは言えない存在だと思う。
それでも本人は…
父親もまた、そういった環境で生きてきたのだとしたら…
『そう考えたら、責められなかった』とケイトちゃんは言っていた。
「自分さえ耐えていれば済む話だからね」
そういう考え方…私は嫌い。
いじめっ子たちに対しても、責める言葉はなかったわね。
優し過ぎるというか、根が綺麗すぎるというか…
『自分さえ耐えれば、自分の感情を殺せば、自分を殺せば。
誰も痛い思いをしなくて済む。誰も苦しまないで済む』という考えをしていたみたいで……
バカな考えだと、私は思う。
「外でやれば文句なしの犯罪行為じゃない。
録音して証拠さえ揃えれば告訴できるわよ、すぐにでも」
そう言葉を並べると
「そうだね^^;
さしずめ学校は…犯罪行為だろうが何だろうが赦される、
『気に食わない相手を殺す』という行為を助長するための牢獄でしかないんだよ」
そう返された。
学校に対しての認識、家族に対しての認識。
その双方に大きな差が生じたのは、それらの環境のせいだと解った。
いじめに関しては、小4の時に限らず、小6、中1と続いたらしいから余計に…
加えて、父親がいつ脱獄して云々というのもあわさって
挙句の果てには、いじめの際には一人も味方がおらず
相談先が先生しかいなかったため、相談した時に「チクった」と貶められ続けてきたことから
『先生に相談してはいけない』という認識まで
小4の時、グルになっていじめをずっと続ける周囲から徹底的に植え付けられたから、余計だったようにも見えた。
だから総括して…
『人とは、そういうこと以外はしない』
その今までに至る経験が全てだったから、余計にそう思ったらしい。