第44章 お泊り・3日目
「わかっています。でも…だとしても、私は私である為にそれを捨てられない。
だって…見ていて、あまりにも…哀しいからっ;」ぽろっ
幼い私もまた、涙を流していた。
「ひっく;;;ぅぅっ;;」
「たとえ今までいなかったとしても、私がそれになります。
だから…一人で抱え込まなくていいんです。自ら一人になろうとしなくていい。
傷付けたくないからと、人を遠ざけなくていいんです。
お願いだから…私に縋って下さい。頼って下さいっ。
私にはもう、これ以上苦しんでいくあなたを到底見ていられません!」涙目
「わああああああああ;;;」ひしぃっ!!
その瞬間、幼いケイトは幼い私に抱き着いてきました。
何故怯えていたのかについて尋ねてみると、理由は至極単純なものでした。
ただ…その当時はまだ、力を完璧に身に付けていなかったし、制御などそれほどうまくもなかった。
だからこそ、傷付けてしまうのではと余計に恐怖ばかりが増すだけだった。
抱き締め始めてから30分間が過ぎるまで必死に離そうとしても突き放せなかったのは…
傷付くのが怖かったから。
自分の起こした行動で、誰かが傷付くのがたまらなく嫌だった。
だから必死に逃げた。逃げて逃げて逃げ続けて、諦めるまで逃げ続けて、壁に追い詰められるまで逃げ続けて…
そうすることで護ろうとしていたのだと、話を聞いた後になってようやく知りました。
対面することによる恐怖が無かったのは本当だとのこと。
それでも出会った当時は力加減を完璧に制御できていたからこそ、力の誤爆で傷付ける可能性など皆無だった。
それだけの鍛錬も積んでいたし、絶対の自信があった。
だからこそ余計に、私との出会いで恐怖を微塵も感じなかったこと自体とてつもなく衝撃的だったのだと言っていた。
涙ながらに抱き締め合う幼い私達を見ながら、私は隣に居るケイトを抱き締めました。
ケイトもまた回した腕に必死に抱き着いていて…その目には涙が止まらず溢れ出続けていた。
あの様子を見て、思う所でもあったのでしょう。野暮に尋ねることはしません。
言いたくなった時に聞くことにしましょう。
それから後…
程なくして、ヒースクリフのもとへ帰っていきました。
ヒースクリフが用意した空間…お婆様もお母様も生前である、私の家族がいる場所へ。