第40章 窮地
ミー「ミー♪」
それから言葉遊びに音楽遊び、芸までやっていた。
うまく出来たら何度も褒めてくれるし、一緒に居てくれるから寂しくなかった。
最初の時、箱みたいな所に閉じ込められて兄弟がいなくなってから寂しかったけど
今は全然で、それが夢だったみたいに思える。
それでも、もう一人の方はとても厳しくて何度か雷を落とされた。
自分を想うからこそだって気付いたのは、後になってから。
「トイレを憶えておいた方が、後で胸を張れるでしょ?お前のためを想って言ってるんだよ?言葉はあれかもしれないけどね^^;」
そう教えられて、怒られることも幸せの一つなんだと知った。
そのクレハお姉さんの膝の上も温かくて、心地よくて…
でもやっぱり、ケイトお姉さんのお腹の上の方が寝心地がよかった。
気付けばゴロゴロとのどを鳴らしてて、そのまま眠ることが多かった。
この人達は、自分の意思を尊重してくれる。
どのおもちゃがいいかとか、どこが一番落ち着くかとか、どこを撫でられると気持ちいいかとか…
お風呂や御飯の時間帯だって自分に合わせてくれる。
それがとても嬉しくて、どうしようもなかった。
好きで好きでたまらない。そんな想いばかりだった。
でも、お留守番を初めて知った。
メイドさんは初めて知る人だから警戒するだろうって、慣れさせる為に大分前から一緒に居るようになった。
「ごめんね。必ず帰ってくるから待っててね」
そんな言葉と共に二人はいなくなった。眠っている間に何度も撫でられたのは憶えてる。
散歩で疲れてたからか、結局夜まで眠り続けてたんだ。
起きたらすぐ御飯を出してくれて、二人の姿はなかった。
でも「待ってて」って言ってくれたから。
だから待つことにした。その間、久しぶりに寂しさを思い出した。
寂しくて仕方なくって、帰ってくるまで玄関で待ち続けた。
メイドさんが温かくする機械と、二人の臭いが付いた毛布を持ってきてくれたから、寒くはなかった。
「ミー」
ありがとうと一声鳴くと、そのメイドさんから優しく撫でられた。
それから日の出になってから二人が帰ってきて、入った瞬間に立ち上がって
「ミー!(おかえり!」
そうお迎えすると、二人が満面の笑みを浮かべて
そのままもみくちゃにされるぐらいの勢いで撫でられた。