第40章 窮地
それからはずっと、ウトウトしていた。
「ミー」と時折鳴くと、その度に優しく撫でてくれて…とても嬉しかった。
暖かくて、安心できる匂いがすぐ近くにいた。心臓の鼓動が近くに聞こえた。
おっきな何かから、感じていた。目が開くようになって、それは人間の手だと知った。
兄弟や母親とは違う。
でも…それだけで心地よかった。暖かかっただけじゃなくって、温かいと感じた。
これが生まれて初めて感じた気持ち。
とても温かかい…「幸せ」という感情で…ここにいるだけで、とっても安心した。
その次の日は元気になってウロウロしていた。
母親と一緒に居た場所とも、兄弟と一緒に居た場所とも違ったから、知りたいという好奇心もあった。
それとミルクの味が変わった。
前のままでもよかったんだけど、美味しかったから全部飲んだ。
クレハ「げっぷさせるのを忘れないように」
ケイト「はっ!)いけない!;忘れてた;」
それからすぐ慌てたような声と一緒に、背中を撫でられた。
それが何度も続いて、「風呂は一週間に一回にするよ、いい?」と尋ねられて…
風呂が何かは解らなかったけれど嬉しい気持ちをどうにか伝えたくて、「ミー」と一声鳴くと
嬉しそうに弾んだような声で「よしよし。可愛い子でちゅねー♪」と撫でられた。
その優しい手つきも、恐る恐る触れるような力加減も、ゆったりとした声も…
自分からすれば、とても安心するばかりだった。
包み込まれるように膝の上に乗せられて、「ミー」と優しい声で名前を呼ばれる。
それだけで、とても幸せだった。
地面も温かくて、柔らかくって…ここにいていいのか、少しだけ不安だった。
「ここにいていいの?」って聞くと、「ミー」という言葉になった。
でも…「んー?いいんだよー。ずっと一緒だからねー^^」という声が、聞こえてきた。
不思議と頭の中にまで響いてきて…それが「霊感を応用したんだよ」って後で教えられた。
よく解らないけど、伝わっていることが嬉しかった。
お母さんや兄弟は元気かなあ?
そう思っていると、お母さんは死んじゃったんだけど、兄弟は元気だと写真を見せて教えてくれた。
「ありがとう」というと、何度も何度も撫でてくれた。
「家族」という感覚を、ここで二人の女の人から教えてもらった。
ここに、ずっといるんだ♪