第40章 窮地
シノン「…そんな…嫌うわけないでしょ」
すっ(ケイトの前で屈んで中腰になる)
シノン「あんたの誠意は、気持ちは…十分伝わってるから」ぽん
ケイト「え?(何で私の頭を触って?」
シノン「…今回、だけだからね」ぎゅっ
そう言って震えた手で、私の左手を取って握り締めてから再び席へ座ってくれた。
それに私は、そっと握り返した。
『ほっ)…』
キリト「リズ」
リズベット「ええ。呼んでくるわ」
それから店の奥からリズに連れ出されたのは、一人の女性と女の子だった。
シノン「…あの、あなたは?」
女「始めまして、朝田詩乃さんですね。
この子が生まれる前は郵便局で働いていました」
シノン「!…あ」
女「ごめんなさい。
私、もっと早くあなたにお会いしなければいけなかったのに謝罪もお礼すら言わずに…
あの事件の時、お腹にこの子がいたんです。
だから…あなたは私だけでなく、この子の命も救ってくれたの。
本当にありがとう」ぺこり
子「ありがとう!」ぺこり
母親に追従して頭を下げた。幼稚園児だろうか…
シノン「命を、救った…
(ケイトが言ってたのと同じ…
(はっ!)!!
まさか…「本人達がどう思っているのかは、聴かなければわからない」って言ってたのはこのこと!?
第三者の口からの言葉よりも、助けられた本人の口からの方が説得力があるから…わざわざ行動に示したっていうの?」
キリト「シノン…ケイトから聞いた。
君はずっと、自分を責め続けてきた。自分を罰しようとしてきた。
それが間違いだとは言わない。でも、同時に君が救った人のことを考える権利があるんだ」
シノン(知ってる…あの夜、ケイトが何度も言ってくれた。
自分を大切にしろって。大切な命なんだからって…
そうでなければ、自分が護った命まで貶めるのと同じことだって)
キリト「君には自分を赦す権利があるんだ。俺達は、それを君に」
子「詩乃お姉さん、ママと瑞恵を助けてくれてありがとう^^」
シノン「…大切な…命)…」涙
私から手を離して、子供から差し出された絵を受け取ってからシノンは涙を零した。
最後には子供に手を握られて、それにシノンは笑ってから
共に、手を取り合っていた――