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白い流星【ソードアート・オンライン】

第37章 テイマーズカードドラフト





何か言いたそうに名を呼ばれた。

それでも無理やり言葉を重ねた。


これ以上言葉などいらない。そう伝える為に。



ケイトはいつも、逐一お礼を述べていた。
メイドにも、執事にも、その気遣いが多少であれ、仕事であれ、その度に頭を下げて礼を述べるようにし続けていた。

そんなに気を使わなくていいのに、その度に何度でも言葉にして伝えようとする。心の中にある想いを口に出し、誠心誠意に接しようとする真摯なふるまいを貫く。


それはきっと、ずっと威圧されてきたからこそ…その些細な優しさでさえ嬉しく、喜びになった。

だからこそ、礼をきちんと述べねば気が済まなかったのでしょう。

だから…あれほどの笑顔を向けて、ありがとうと言える。


私にはそれが衝撃的だった…生前の母と重なったから。

「人に優しく接するのは当たり前。でも逆にされた時には感謝を忘れないこと」

それは何度も教えられたことだったから。
その姿勢をもって、毎日共に過ごしていたから。



そうすることで、また何かお返しをしようとするケイトの意図を理解していながら、私はそれをあえて踏んで止めた。

ケイトもまた、それを理解しているようで深く言及しては来なかった。


礼を言わずともいい。謝罪などいらない。お返しもいらない。

あなたと共に生きていられる。それだけで感無量なのだから。

そう何度も繰り返し礼を言われた時に返した言葉もあってか、ケイトはそこで止まってくれた。



ただ、少しでも前を向けるようにしたかったのかもしれない。

共に前に進めるのなら、私はそれだけで…


死んだ母とは、お婆様とは…共に進みたくとも、もうできないのだから。



今ここに生きていることに感謝しつつ、共に前を向いて生きていくことこそが

私の対してのお返しだと考えて欲しいと最後に述べた。


それにケイトは頷いた。「必ず、共に生きる」と――


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