第37章 テイマーズカードドラフト
ケイト「見事に偏ったな」
クレハ「ええ。そうですね。
でも昼というのもあって人数が少なくてよかったです」
ケイト「だね。誰もが驚くよ」
そんな中、私は弓にばかり目がいっていた。
召喚獣は弓使いの獣耳巫女で後方支援に秀で、レンと同じくLv1で素早さ999。
ケイト「…戦場を掻き乱すしかできなかった」
クレハ「?」
ケイト「威嚇の意で矢を斬っていた。弓を斬って、襲い掛かられれば応戦して…
戦場で死した者がいれば、自軍のものならば持ち帰っていった。
せめて家族のもとで安らかに眠らせてやりたかった。
自分にできたのは、人を斬れないまま、傷付けられないまま、殺せないまま走り続けることだった。
戦場は地獄だ…(遠い目&俯)
斬り裂かれる者の断末魔。哀しみ、足掻き、泣き崩れ、怒り狂ったような怒号…たくさんの声が交錯し合う。
しかし感情に振り回されている者の動きはひどく単調だ。
逆に死の危険を高め、死んでいった者が多くいる。
弓は鍛練でさせられたことはある。撃てた。
でも人に向けては、傷付けると思っては無理だった。
だが矢の軌道を見る為、対応する為に見ていた。
矢を斬る者等そうはいない。
少しでも敵を引き付けて、他が生きれるように…そう願って走り続けた。
それは果たして無駄だったのか、どこに繋がっているのかもわからぬ。
でも…相手の微細な筋肉の強張りからの動きの予測、洞察眼、動体視力が役立ったのならば喜ぼう。
走りながらの戦場全体の把握。走った先の足元にうち捨てられてあった槍を咄嗟に蹴り上げてから投げつけ距離を取ったり…
5つの戦を刀一本で切り抜け、4度生き永らえた。
その経験を通して、現世での父からの虐待まがいのDVを常に受け
戦国時代で身に付けた動きと、ここで身に付けた動き…
その二つを統合して一つの流派を生み出した。
それこそが《風月流》だ。
今まで…今の今まで打ち明けられなくてごめん。
私は…人斬りなどできなかった。残されたものの哀しみを、慟哭を知るからこそできなかった。
だがそれでよかったと今は思う。
ただ、そういう人を減らしたかった、護りたかった。
そのような甘い人間が戦に駆り出されていたことは忘れないでくれ。
私は前世、自らを守り切れずに死んだ。
だが今世はここで、人を護る人間になる」