第34章 アメリカ到着
ケイト「…さっきのクレハやお爺様の考えに、私も同意見だ。
でも…そう考える人もいれば、そうじゃないっていう人もいる。
誰もが…その育った経緯や、人によってぶつけられた痛みで変わってしまう。
その痛みを、同じ苦しみを味あわせたくないって思う人がいれば
それを人に味あわせなければ赦せないって人もいる。
生きてる上で…誰かを信じることができなくなったりもする。
人と向き合う上で一番見ないといけないのはその本質で、経緯で、それそのものだ。
知らないまま、勝手な判断で解釈で「悪い人間」だと決めつければ、それで周囲に言い広めればその人こそ悪い人だ。
暴力に似たそれで無理やり押し付けようとする人だっている。
争いで、力で、それじゃあ何度も繰り返しだ。
だけど、言葉で納得できない人もいる。誰もが平和を望んでいるようで望んでいない。
自分にとって「満足のいくもの」を常に求め続ける、それが人間だ。
終わりない欲望をもって、終わりない夢をもって、何でも突き進む。
たとえ傷付けようと、平気な面をする人だっている。
それで人のことを痛む人もいる。
誰もがいい人じゃない。でも誰もが悪い人でもない。
誰しもに、良い部分はある。
そこに焦点を当てるべきだとも思うが、それで悪い部分をないがしろにしていいわけじゃないんだ。
私はさ、一歩前に踏み出す勇気がなかった。
怖くて、前に進めなかった。歩み寄れなかった。話しかけることができなかった」
拳を握り締めながら、震えながらケイトは語ってくれた。
それはどこか弱々しく、被害者が少しでも増えることを痛んでのことだと見て取れた。
それほど…そういう「殺したり傷付けても何とも思わない人間」を見るだけでも苦しんでいた。
それはきっと、その先にいる「被害者」をすぐ近くに感じ取れてしまうからこそなのかもしれないと。