第34章 アメリカ到着
爺「勝手だと思うじゃろう。
じゃが、自分の見えるものしか、感じ取れぬものしか、見ようとせぬものなんじゃ。
そして…それこそが「人間」というものだと、わしは思うよ」
ケイト&クレハ『…』
その言葉に、私達は揃って聴き入っていた。
本当にその通りだと思ったからこそのことだった。
上空を見上げながら、星空を見つめながらの言葉に…私達もふと目線を上へ上げていた。
その星空もまた、たくさんの時と共に築き上げられたものなのだろう。
人の命が、一つだけで成り立つものではないように…
数多の、たくさんの存在から成し得たそれを見ながら、感慨に浸っていた。
爺「あまつさえ背負いもせず無かったことにするとは…
一体何様のつもりじゃ?神にでもなったつもりか?自分さえよければそれが全てか?
確かに必要な殺しじゃろう。
だが背負わず、その命の分まで生きようと試みもせん。
帰れるのが嬉しくて笑うのは解る。
じゃが殺した後に何故悩みもせん!
戦時中で初めて殺しをしてノイローゼに陥った者の方がまだ普通の反応じゃ!!
比べるのもおこがましいわ!!!
国の為、子孫の為と戦に駆り出された者達はどうなる!!?
どちらもたくさん死人が出た!お父様も死んでしもうた!!
じゃがそれは祖国の為、まだ見ぬ子等の為に命を捧げたんじゃ!
それであってもなお殺しに手を染めれば悪夢に見て苛まれ苦しんだものじゃ!!
それを何故道楽のように語られねばならぬ!!?
どうしてその気持ちを知った顔で表現されておる!!?
実際に殺しなどしたこともない小童が何様のつもりじゃ!!!
苦しみ助けてと、殺してくれとせがんでこられた側の心境は!?
殺さなくても死ぬはずのそれに、殺さねば一生怨むぞと縋られた時の気持ちは!!?
それでも己を殺しながら殺しを犯した!
そうでなくては救えなかった!!死ぬ間際にありがとうと涙を流して言われた!!!
何度も悪夢として見たわ!!死んだ者と近しい存在には感謝の念を語られた!
じゃが内心では死んで欲しくはなかったじゃろう!!色んな思いがあったじゃろう!!!
わしだってそうじゃった!!!!死んでなど欲しくはなかったわ!!
殺しとは…哀しみしか生まぬ。喜びなどない。
虚しさしか呼ばぬ…
失った側、奪った側、双方に決して消えぬ傷を負う」