第33章 アメリカへ
言葉にならない声を出しながら、ケイトは涙をぼろぼろと零しました。
頭を撫でる手と胸にすり寄るように、シートベルトをしたまま身体を寄せて私へ向いた状態で縋りつきながら
いつもならば「ありがとう」と伝えるはずだろうに、そんな余裕さえもなくしたそれは、私へあることをありありと伝えてきました。
それは8分に亘って続き、それほど語るだけでも辛かったのだというようにも見えました。
やはり苦しかったというのは間違いではなかったようですね。
私も…過去の嫌な思い出を伝えるのは、正直とても勇気がいりました(1092ページ参照)。
でも、それで受け入れられたことが、何よりも喜ばしかった。
だから…私はあの時…とても、嬉しかった。
涙が止まらなくなるほど、その出会いを喜んでくれたことが嬉しかった。
そう思うに至った経緯を知りたかった。でも少しだけ怖かった。
あなたが、どれほど闇を抱え込んできたのか、周囲からの扱いを背負って、自分を責め続けてきたのか。
そうでなければ、あのような想いになど至れないだろうから…
そう想像するだけで、あのフラッシュバックの時の取り乱しようが想起した。
何度も自分を狂ったように殴り続けたこと、死のうとしたこと、息が荒れて呼吸もままならず気絶したこと。
知ることが、怖かった。それ以上にあなたが苦しむことが嫌だった。
それでも…私は伝えたかった。
ちゃんと理解して欲しかった。
その上で、受け入れて欲しかった。私の、ありのままの全てを。
受け止められた時、私は…今までにない喜びを感じた。
きっと、ケイトの今の状態は私のその時と同じなのでしょう。
だからこそ、泣きじゃくって咽び泣き続けて…ただただ肩を震わせている。
苦しんで泣いている時では、ごめんと何度も言ってくる。
でも…嬉しくて泣いている時では…何度もありがとうと言ってくる。
今、ここにあるのは…今までのそれらを飛び越えた、もう一つの顔。
余裕をなくすほど感情が爆発したものなのでしょう。
話して、受け入られるなど、思わなかった。
否定されるばかりの経験が多かったからこそ、語る際にその辛さもまた同時にあった。
それでも受け入れてくれたからこそ…私に抱き付いたまま咽び泣いている。
私には…それが少し嬉しく、誇らしく感じました。