第31章 帰還
クレハ「…」ちらっ
それらの言葉に、逸らしていた顔をケイトへ向けると
その顔は涙でぐしゃぐしゃで、とても見ていられるものではなかった。
ケイト「私は、あの時言われた言葉が無きゃ…きっとここまで変われなかった。
自分を信じていいんだってこと。
それで解放した力でどんな目に遭ったって、それで責めたりしないって言ってくれたこと。
私の心はどんなものにも負けないぐらい強いって信じてくれたこと。
あの言葉をかけられた時…死ぬほど嬉しかったことっ;;」涙&ぎゅううっ!
クレハ「ケイト…」涙&ぎゅ
ケイト「ぐすっ)…っ;
自分なんか死んでもいいって思ってた。
自分にとっては、それが全部だったんだ。
殴られて、蹴られて、何度も何度も傷付けられて、殺されかけて…
父親にとっては所有物なんだから、そういう目に遭って普通なんだって。
いじめられてた時も、強く出れなくって…抵抗できなくて、言葉も何も返せなくて…
怖くて、声なんて出せなかった。出そうとしても、障害みたいに出しているはずなのに出なくて…
気付いたら、声なんて出てないって言われるようになった。
どんどん小さくなって、伝えたくても伝えられなくなって…
伝えようとする努力を怠ってるんだって、周囲からは言われた。
段々と自分を責める時間が増えていった。
でも自分の周囲の環境は、主張をしたらダメなんだって言っていた。
20歳になるまでずっと、そういう目に遭ってきたから…余計、それだけは離れてくれなかった。
でもね…そんなしがらみも、関係ないって飛び越えてきてくれた。
クレハがいなきゃ私は…きっと、知らないままだった。
人が、こんなに温かいんだってこと。いつか報われる時が来るんだってこと。
大丈夫だって、支えてくれる人が、助けようとしてくれる人がいるんだってこと。
全部…クレハが最初に助けてくれたから、最初に与えてくれたから、自殺を止めてくれたから…
何より、愛してくれたから……っ;;
だから、ここまで来れたんだよ。
自分ってものを取り戻して、隣に居れるようになった。
たったそれだけ…それだけのことが、どれだけ大変で…難しいことかっ;;」
涙を流しながら、私にしがみ付くように抱き締めてきた。
たったそれだけで…
愛しい、離したくないという強い想いが伝わってきた。