第31章 帰還
部屋に響く涙声に、一つの声が重ねられた。
クレハ「私っ!!
ケイト「あの、浮気防止のつもりで抱き締めてるわけじゃないよ?;
ただ純粋にハグしたいし、それだけで幸せだって思うし、ストレス発散にいいって聞いたからだし」
クレハ「……え?」ぐすっ
ケイト「えっと…;」
クレハ「…勘違い?;」
ケイト「…うん;」気まずそうに頷く
クレハ「!!//////」ぼんっ
その瞬間、いたたまれなくなった私のとった行動は非常に単純なものです。
ケイト「あの、クレハ?;」
クレハ「寝ます」いそいそ
ケイト「ちょっと;」
クレハ「おやすみなさい」ふいっ
ケイト「私からも一言言わせて!;」
クレハ「…どうぞ」
ケイト「私、クレハ以上に想ってる存在なんてないよ?
小さな嫉妬から始まったクラインとの恋だけど、恋は恋だった。
でもね…どうしたってクレハのことが忘れられなかった。
どんな時でも…クレハならどうするだろうって、勝手に頭に浮かぶんだ。
クラインと居ても、どうしたって…違うって違和感ばかり感じていた。
でも、クレハには1500年も続く家を遺さないといけないから…そんな想い邪魔なんだって、無理やり目を逸らしてた。
私は、クレハじゃなきゃどうしたって駄目みたいで…
クレハがいなきゃ、きっと歪んでたことさえ気付けなかった。
周囲から言われても、周囲の普通を押し付けるなって風にしか言えなかった。
今だからこそ普通っていうものがなんとなくだけど解る。
まだ引きずってんのかって眼で見られることもあるけど、私にとってその世界は…人は…
そういうことしかされたことがないから、そういう意識がぬぐえないんだ。
殺そうとされた、傷付けられた、だから初対面やそういった類の人達には
まず恐怖が出る、怖くてたまらなくなる、声が出なくなる、震えが止まらなくなる。
私は…障碍者だ。
精神に深い傷を負って、修復不可能になってる。
でも簡単には治らない。それほどに傷は深い、和らげてくれる存在なんて一人もいなかった。
でも…唯一が現れた。それを癒してくれた最初の存在は、クレハなんだ。
大丈夫だって、教えてくれた。
ただ助けたいってだけで動いてた。そうすることで恐怖から目を逸らしてた。
それが、大丈夫だって信じられるようになったのはクレハがいたからだ」