第31章 帰還
その証拠を動画として配信したSaiverを支持するコメントも多々あったそうだが記述は省く。
正確には光を使用したミーすけが、ALOの周囲にある情報経路に光速で紛れ込ませたという方が正しいとも言えるが、それらの詳細が知られることはなかった。
だが、2025年1月22日17時18分にて須郷伸之が逮捕されて周囲へ露見されたのは言うまでもない。
彼は逮捕後も黙秘に次ぐ黙秘、否定に次ぐ否定。
挙句に全てを茅場に負わせようとするなど足掻きに足掻くも、部下の1人が重要参考人で連行された直後、あっけなく全てを自白する。
裁判が始まってからも精神鑑定を申請するなど手段を選ばず足掻き続け、第一審で実刑判決が下るも控訴して東京高裁で係争中。
後に、海外逃亡を画策していたことで保釈申請を却下されていることになった。
(Wikipediaから抜粋)
『(そんなに改善の余地が見られない外道なら)いっそのこと死刑にでもすればいいのに』と、Saiverが言いかけたのは言うまでもない。
光状態を脳に使役すると、脳内にとてつもない負荷がかかるようで
一瞬とはいえ雷ほどの電力が流された状態ととらえていいとまで表現されている。
無論、そのままでは脳の働きが無になり、植物状態になってしまう。
はずだった――
『ケイト君』
…?だれだ?
『また随分と無茶をしたようだね』
その声…まさか?
『ああ。私としたことが、ゲームクリア報酬も忘れてしまっていた。
余分に渡すが、君の持つ醤油ラーメンのデータだけもらってチャラとしよう。
なに、報酬分が多めでも気にしないで取っておいてくれ。
あの2年間は、それほどに、非常に有意義だった。
本来ならあり得た脳破壊を何とかしよう。
君はこんな所で死んでいい人間ではない。
目を覚ました時にはおそらく忘れているだろう。
だが、一つだけ忘れないでくれ。
君の生き様に心から惹かれていた人物がいたことを』
そう左手を取られて上へ引き上げられる感覚がした。
その顔はどこかほころびていて、気が付いた時には左手を上に伸ばしたまま意識を取り戻していた。
その場所は未だ、ALOの隔離された空間内のベッドの上で
まだ戦いは終わってないのだと、ありありと告げているように感じた。