第31章 帰還
いつものように左手を握り締めてから眠りにつこうとする中、微かに指が痙攣したように動いた。
しかし瞼は開くことなく、そのまま昏々と眠りについています。
今に始まったことではないとしても、やはり…僅かな一動にも反応してしまいがちです。
クレハ「ケイト…私はもう27歳になりましたよ?
いつになったら起きるのですか?
今…どこで、何をしているのですか?」
静かな部屋に木霊する中、月明りだけが明るく私達を照らしていた。
いつものように響く電子音はさほど大きくはなく、その言葉に伴う変化は何も訪れなかった。
クレハ「おやすみなさい。また来ますね」
そう言ってから去っていくと、また微かに電子音が跳ね上がった。
僅かなりとも反応が現れるのは嬉しいものなのですが…
やはり、こう会話ができない状況が続くと気が滅入る一方です。
ケイト…
一体、今、どこで何をしているのですか?――
その問いは、電気の消えた廊下の『闇』の中へと消えていった。
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どこなんだ、ここは…
意識が戻ると、そこは現実でもなく、そこに帰るでもなく、不思議な空間に捕らえられていた。
部屋のようなもので、確かにベッドがある。机もある。
でも…出口がどこにもない。
目を覚ましてすぐに分かったことは、閉じ込められているということだった。
そんな部屋の近くで、何やらでかい声でがなり散らしている男性の声がかすかに聞こえる。
といっても、システムや耳が拾っているわけではない。
ただ…霊感を通して感じ取っているだけだ。
『何故だ!!?どうしてこの個体には影響が出ない!!?』
『わかりません!!
こちらからの干渉を一切受け付けず、閉じ込めることしか出来ません!』
『ちっ!)役立たずめ!!!』
げしっ!!
言葉から察するに、人体実験のようなものなのかもしれない。
でも私には、その環境変化などを行えないということなのだろう。
あの当時、クレハの予測に対して満足気に頷いたヒースクリフは
私に跪いて、ある言葉を囁くと共に右手で私の左腕を握ってあることをしてきた。
おそらく、その影響によるものだと察しが付いた。