第30章 ゲームクリア
《11月7日16時55分、ゲームはクリアされました》
そんな言葉が脳内へ響き、意識が一時切り離された。
しかし気付いた時には透明な床の上に立っており、夕暮れが煌々と映し出されていた。
よくよく足元を見ると、そこにはアインクラッドがあった。
ケイト「!!…クレハ?」
クレハ「!ケイト!何故こんな所に?」
ケイト「わからない。
もしかして、ヒースクリフが?」
茅場「そうだね。
最後に少しだけ、話をしたかったが故だ」
ケイト&クレハ『!!』
クレハ「…?誰ですか」
ケイト「ヒースクリフ!!何で消えたんだよ!!」
クレハ「何故わかるんですか!?;」
ケイト「姿が変わったってわかるよ!だって…(ぎゅっ)
魂の波長も、何もかもが全く同じなんだから」うるっ
拳を握り締めながら、彼女は涙を浮かべて言い放った。
確かに、彼との別れを惜しんでいたのは彼女でしたね。
クレハ「一つ問うておきます。
何故、そこで自殺などという手段を?」
茅場「簡単な話だ。
私は…システムすら超越する『力』の存在を、信じたかった。
人の中に、その可能性を見たかった。
そして彼女は証明した。
麻痺に打ち勝つだけでなく、見たことの無い強さを発揮して。
誰も殺させまいとする態度、相手を想うが故の気高き信念…
それらがあったからこそ成し得たのだろうと、私は思う。
私には、ケイト君は殺せない。
かと言って、彼女もまた私を殺せない。
だからこそ…こうすることで終止符を打ったんだよ」
崩壊していくアインクラッドを見つめる彼に
私とケイトもまた…そこに目を向けた。
茅場「結果、誰もが死なず、一人も欠けずに帰らせた。
ケイト君、君の勝利だ。
ゲームクリアおめでとう、ケイト君、クレハ君」
クレハ「…今一つ、実感が湧きませんね」
茅場「今、SAOのデータの消去が行われていて、あと10分でこの世界は完全に消滅する。
生き残った全プレイヤー9515人は既にログアウトを完了している。
しかし、死んだプレイヤーの意識は帰ることはないだろう。
これは余談だが、ケイト君が助けに入っていない状況を想定して計測してみた結果、3853人の死者が出ていた。
つまりを言うと、君は単純計算でも3368人もの人達を助けたということになる」