第5章 Ze~ro~な智くん
翔side
ADの話によると、滅多に風邪をひくことのない町尾さんが、高熱を出して急遽欠席するとの連絡が、今朝局に入ったらしい。
「えっ、じゃあ今日の放送どうすんの?」
町尾さんはメインキャスターだ。
その町尾さんがいないとなると、進行は誰が?
「聞いてないんですか? 今日の放送、メインは櫻井さんですよ?」
「お、俺っ? 噓だろ…? じゃあさ、”イケメン”のコーナーはどうすんの? 俺、朝から取材に走ったけど?」
ひょっとしてお蔵入り?
いやいや、それはないでしょ…(;^_^A
「それなら、ちゃんと櫻井さんの代理の方に来て貰ってますから、安心していいんじゃないですか?」
そっか…、それなら一安心だが…ε-(´∀`*)ホッ
「で、その代理ってのは誰が」
そうだ、それが一番の問題だ。
俺が町尾さんの代理を、ちゃんとこなせるかどうかは、相棒と言うべきサブとの息の合ったコンビネーションがが必要だ。
「それが、ですね」
な、何だ…?
何がそんなに可笑しい?
「実は櫻井さんのよ~く知ってる人ですよ」
俺の知ってる人?
「誰? 勿体ぶってないで教えてくださいよ」
俺はADの脇腹を指でツンツンと突っついた。
「分かりました。ちょっと耳貸してください」
俺は言われるまま、ADの口元に耳を近付けた。
そして…
「ウッソ…! マジかよ…」
会議中にも関わらず席を立った俺は、会議室を飛び出すと、局の廊下を全力疾走した。