第5章 就任
メフィストはため息をついている。
「まぁいいでしょう☆さぁ、疲れた主人を私が癒して差し上げましょう!」
腕を広げてフールが胸に来るのを待っている。
『メフィスト優しいね。でも、犬の方がいいなぁ』
「それじゃあ貴女を抱き締められないじゃないてすか」
クスッと笑う。『そっか…』
フールはメフィストに背を向けた形で腕の中にすっぽりと収まった。
二人はお互いの胸に何かを思い浮かべながら霞がかった月を見上げた。
沈黙が暫くのあいだ続いた…
その沈黙を打ち消すように…
「今日、決意に満ちたフールは…今までで一番美しかったですよ。」
メフィストの言葉を聞き彼の方を見る。
そんなフールの頬にメフィストはそっと手を置いた。
しばらく無言で見つめあった。
月の光りに照らされた、愛らしいその表情の中にはなんとも言えない妖艶さを漂わせていた。
フールのアメジストのような瞳に引き寄せられるようにメフィストの顔がゆっくりと近づく。
フールはそっと瞳を閉じると、甘く…長いキスがおりてきた。
名残惜しいかのようにゆっくりと離れる二人の唇。
「何かあれば私を呼んでください。いつでも貴女の元へ駆けつけますので…」
『ありがとう…』
メフィストの腕の中で静かな夜は更けていった。