第7章 MJの憂鬱
あああ…どうして翔ちゃんのここは、
こんなにも俺の身体にぴったりと重なるんだろう…
もしかしたら俺たち、
この形に生まれ変わる前までは、
ひとつの個体だったのかもしれないよね?
「…ねえ…キスして…」
こんな開放的なところで二人っきり…
こんな積極的な言葉も、すんなり言えちゃう♪
↑あなた、結構いつも言えてますけど~?
「いいよ…俺も今、そんな気分だったんだ…」
「フフフッ…」
「智…❤」
「翔ちゃん…❤」
俺は彼のキラキラした瞳を見つめながら、ゆっくりと目を閉じる…
…近付く気配…
あ、もう直ぐ……
その瞬間。
「わああぁ~!!すっげぇ~!!」
えっ???
翔ちゃんの、マジでキスする1秒前とは思えない雄たけびに、俺は目を開けた。
「智、見て…あれ!!」
翔ちゃんは指差したその先には…
周りの空と雲と、
煌めく海をオレンジ色に染めて、
それを縁取る濃いBlueを、
一段と際立たせている。
そのオレンジは、まるで空気さえも、
自分の色に染めているようだ…
「…綺麗…」
在り来たりのそんな言葉しか出てこない自分が恨めしい…
こんな時、詩人になりたいよ、ホントに。
「……」
「………」
時が……
止まったみたいだ。
俺も翔ちゃんも、何も言わず、
暫くオレンジの世界に浸る…
自分たちが、美しい絵画の一部になったような、
そんな錯覚さえする。
………この世の中に、
こんな一瞬が存在することが、
もう信じられなくて。
どちらからともなく見つめ合い、
ゆっくりと近付いていって、
そっと唇を重ねた。
その瞬間、オレンジ色の風景画の中に、
俺たちも溶け込んだ。
勝手に唇が震えるのが、何か不思議……
つーかさ。
俺、何で泣いてるんだろう…