第6章 甘い夜のための刺激的なスパイス
リハーサルした訳じゃないから、
そっからはもう、その場の雰囲気で…
『仲良くしようね』
と俺が言うと、タッキーは、
『お願いします…』
って……この瞬間…
時間にしたら、0.2秒。
タッキーが受ける方だと決まった。
その場から動かないタッキーの両肩に手を掛けると、
タッキーは目を閉じる。
俺からいかなきゃだからさ…
俺は薄く目を開けたまま、タッキーの魅惑的な唇に、
自分のをくっつけた。
『ちゅっ❤』
思いの外、俺の立てたリップ音が
スタジオ内に可愛く響いた。
照れるタッキー…
『何だ、これっ??』
俺も照れ隠しに、そう言って両手を軽く上げた。
盛り上がったスタジオの様子と、
俺たちのキスシーンが、スローで再生される。
………
……
部屋の中には、耐えがたい沈黙が……
さて…
これは、もう……
「智、ごめん//////」
俺は、ソファーから降りて、
彼の前に正座して頭を下げた。
ここは色々言わずに
謝っちゃえ!!
智の裸足の脚を見ながらの土下座…
これじゃ、浮気がばれて謝るダメ亭主じゃん、俺。
………
……………
あれっ??
恐る恐る顔を上げると…
えっ??
まさかの、涙……
「ちょっ///なんで?そんな、泣かなくたって///」
般若の形相で俺を見てるのかと思ったら、
両目から、涙をぽろぽろ零して泣いていた。
「智…」
グスングスンと鼻をすすりながら、
「こんなさ、仕事のことなのに、俺って、酷い奴だよね?こんな謝らせてさ…
最悪のパートナーだな…って、
そう思ったらさ…何がだか、泣けてきて…」
「何でだよ?最悪じゃないって!!」
俺は慌てて智の隣に寄り添って、肩を抱いた。