第5章 こうなる運命
「...つっ///」
手首を捻られて、身動きが取れない。
大声を出せば、騒ぎが大きくなってしまう。
...ちくしょう...どうしたら...
その時。
帽子を目深に被った雅紀が、
「お巡りさ~ん!こっちで~す!!」
と走ってきた。
「嘘だろ!?」
そんなに悪いことしてなくても、こういう輩は、警察には敏感に反応するらしく、
俺を離して一瞬周りを見回した。
その隙を付いて、俺はその場から走り出した。
「あ、待て!逃げんな!!」
そいつ等は追いかけて来たけど、俺と相葉くんが必死に逃げたら、そうは追いつかれない...
夜の街を相葉くんとふたり、
手を繋いで走った。
雨の中を、振り返らないで...
全速力で...
もう諦めたみたいだ。
あいつ等も着いてこない。
丁度やってきた空車のタクシーに乗って、相葉くんのマンションに二人で向かった。
理由は、ただ単に、そこから近かったから。
そのまま自分のマンションに帰ればいいじゃないか?
という選択肢は、この時の俺にはなかった。
「ニノ、相変わらず脚速いね...」
「逃げ足だけな♪...あなたも、酔ってた割にはカッコいいフォームだったじゃん」
「だから~...酔ってないってば...」
俺たちは顔を見合わせて笑い合った。
「上がってよ...コーヒーでも入れるよ」
「あ..うん...でもさ、服がびしょ濡れなんだけど...」
見れば、俺も相葉くんも、雨の中を走ってきたせいで、ぐっしょり全身濡れていた。
「ホントだ~...寒いと思った!」
「気付かないのかよ...」
笑ったけど、震えてて上手く笑えてなかった。
「よし!コーヒーの前に風呂だ!!行こう!」