第1章 はじまり
気づいた時には遅かった。
生ぬるい、ぬるりとした感覚が私の唇を奪った。
「っ!はいばくっ!」
「黙れよ。」
低く、這うような声。
その声にびくりと体が震える。
抵抗が無くなったことに気づいたのか、灰羽くんは大胆に舌を進入させてくる。
私が逃げることのないように私の両手を拘束し、あろうことか太腿に今までの行為で起ち上がったらしい股間を押し当ててくる。
本来なら嫌がらなければいけない。
でも、私…
「舌、絡めてくるなんて随分ノリ気ですね。
年下には興味ないんじゃないんですか?」
灰羽くんの低い声でふ、と我に帰る。
無意識に私、快感を求めてた…?
それに気づいた瞬間咄嗟に強く胸を叩き、私と灰羽くんの唇は離れた。
「うそっ!やっ!違うの!」
「違わない。そんな風にされたら俺、勘違いする。」
逃げようともがく私の力なんて簡単にねじ伏せ、私を胸に抱く灰羽くん。
「好きです、椎名さん。
はじめて会った時から貴女が好きです。」
いけない。
わかっているのに
私の中の”オンナ”が疼く。
ココロが、揺れる。
ふ、と抵抗をやめた私の身体。
ぐいと灰羽くんの胸を押す。
「貴方に気持ちはあげられない。
だから…」
「一晩だけ、私をあげる。」